きれぎれ

 深夜だが、まだ事務所。担当する利用者のヒトビトの「緊急連絡時対応表」を作成中。〆切は明日。徹夜ムード満載。書きつつ、またも今の自分に障害者サポートの専門性が皆無な点に「限界」をひしひしと。日々の業務に追われ、資格の勉強も出来ない。10年単位の長い眼で、一人前の支援者になるには、何かライフスタイルの転換が必要(と、これも前に書いた、同じ内容ばっかり)。


 ある知的障害者の共同作業所・グループホームの人から依頼が。来月の総会後半の学習会で、「事業所で働く人間」の立場から何か喋ってほしい、と。ほぼ同年代の男性K君が、事務所を訪れる。話す。
 母体の大きい施設などの職員(公務員に準ずる待遇)は今も切迫感に乏しい(自立支援法って何?どうせまた仕事がちと忙しくなるだけでしょ?)。小さな法人の職員は、(運営・雇用に関わるから)切迫感が強い。でも当事者の家族の多くは、今も切迫感が乏しいと映る。なぜ? アキラメ?
 事業所のアナウンスの足りなさ、言いにくさもある。法人の職員が、その法人を利用する当事者の家族に、自分たちの経営や運営の話がしにくい、とその人が言う。第三者の立場から率直に話して貰った方がストレートに伝わるのでは。
 自分を振り返ると、事業所の内部でも、その手の話を他の職員とするのは色々難しい。せめて、屈託なく、普通に「給料のこと」「将来の不安」等、話せる場をつくりたい。去年、そんな自主学習会もした(アメリカのNPO法人大学で学んだ人に話を聞いたり)。いわゆる戦後型の労働組合っぽい感覚はやだし、小さな福祉事業所の場合、そもそも使用者/労働者の明確な対立が生じるほどの収入がなく、労組的なものが労力の空費に終るだろう面もある。だったら、各事業所の越境的なユニオンか。それは現にあるし、非正規雇用のフロンティアを行く障害者サポート労働者だから、今後も増えていくだろう。スキルアップは必要で、専門性も必要だ、と福祉業界の人がしばしばネオリベラルな能力主義を唱える。それは当然かもしれない。能力や技術のない奴はこの業界では生き残れない、と(障害者へは平等主義/支援者へは能力主義というダブル基準)。が、ふつふつとつのる違和感をどうにもできない。でも、それも含め、全ては自分の能力とやる気の至らなさの言い訳かも知れない。・・とか、結構そうやってウロウロ悩む同期のヒトビトは、自分だけじゃない気もする。


 とにかく、その発表のための原稿を作成せねば。何を伝えるべきか。愚痴ではない形で。何より「語り口」が大事なのだ。たぶん、この業界の人間は、アナウンスする努力をかなり怠ってきた。あれこれ言い訳をしつつ。


 職場の広報誌に、以下の記事が載る(この広報誌、川崎市に1500〜2000部配布されている、結構大きいんじゃないか)。自分の勤める法人も所属する「かながわ障害者支援事業者ネットワーク」(ヘルパー事業所同士のネットワークだ)の関係で。
 支援者団体は当り前だが経営体であり「事業所」でもある。そのアナウンスが確実に欠けていた。利用者・家族の不安を煽ってはいけない、と。一種のパターナリズム? だから、わざと事業所チックな書き方をオススメした(下の文を書いたのは杉田ではない)。ヘルパー事業所の配分を増やせ、少なくとも今の下がりに下がった水準をこれ以上下げるな、という素朴な特殊利益の話ではある。それだけではダメだともわかる。でも、正当なパイの配分すらなし崩しに、在宅部門は押し潰されつつある。「在宅部門の充実」は既に疑えない合意事項だと思うが、流れは逆行にしか見えない(一部の就労組+多くの家族介護)。それに抗するは、ヘルパー事業所の素朴な声も必要だ。
 たぶん障害者サポートの世界は、消費者/売り手という関係では今後も割り切れない。もちろん、その部分が足りない。措置から契約へ。サービスの選択へ。そういわれた。福祉内輪、既得権益はあったし、今も生々しくあり、聖域ではない。でもそれだけじゃ根本はもたない。そう思う。かといって、コミューンや相互扶助への回帰も少し違う。別の形で排他的になるし、危うさもかなりある。資本や交換原理による過酷な切断を受け、かつその先にある分配の原理とか共存の技法とか。当事者も家族も支援者も同列におきつつ。過酷だし、今はまだポテンシャルの部分でもあるけど。自分の生き方として、ちょっと考える。ある種の覚悟の問題。


 「かながわ障害者支援事業者ネットワーク」と東京の「居宅サービス事業者ネットワーク」が呼びかけ、「全国障害者居宅支援事業者連絡会」として、厚生労働省に要望書を提出しました!!


 支援費居宅派遣事業者の運営が窮地に立たされています。
 横浜では、県下最大の事業者である事業所がこのままでは運営が出来ないとして年内に『撤退』を表明しています。これにより、500人ほどの障害者へのヘルパー派遣が従来通りには派遣が出来ずに、横浜市としても独自の対策を立て、市単独で補助金をつけて他の事業者に依頼をするという状態になっています。
 民間の事業者もようやく障害者へのヘルパー派遣を開始したばかりなのに、支援費からの撤退を余儀なくされようとしています。
 このような状態を放っておけば、一割負担してもヘルパーの派遣が困難になる状態が予測されます。
 ようやく芽生えた社会資源を大事に育てるためにも、事業者が撤退せざるを得ないような厚生労働省の一方的な介護報酬単価の切り下げに強く抗議しなければならないと思います。


 (1)平成17年度ヘルパー単価の見直しを撤回してください。
 実際にこの4月から、身体介護・移動介護の単価が大きく下がりました。例えば当法人では22パーセントの収入減です。


 (2)ヘルパー単価設定に際しては、事業者代表を入れた『公開の協議の場』を設置してください。
 昨年も今年も、ヘルパー単価の切り下げは一方的かつ唐突に決定されました。全国のヘルパー事業所が意見を述べる機会は与えられませんでした。


 (3)ヘルパーの雇用促進が出来る環境の整備を施策してください。
 慢性的な人手不足、特に若い男性職員の不足は、経済的な問題が大きく、長期的な地域支援と人材育成をすすめるには、一定の生活を維持できる条件の整備が不可欠です。


 (4)移動介護を「個別給付」からはずすことには、絶対反対です。
 実質的に、支援費制度の目玉の一つと言われた「移動介護」が、障害者自立支援法になると『個別給付から外され』一対一のヘルパーによるサポートが受けられなくなります。


 (5)「定率負担」の導入を撤回してください。
 次の1月から、福祉サービスの1割負担(定率負担)が始まります。特に低所得の当事者・家族にとっては厳しく、生活費や医療費をまかなえない人も必ず出ると言われます。


 (6)包括払い方式導入を撤回してください。
 きわめて低い単価が設定され、長時間介護が必要な方(ALS、24時間介護が必要な人など)のサービスが制限される可能性があります。


 (7)グループホームホームヘルパーの派遣拡充こそが求められています。
 ホーム利用者の定員が現在の4〜5人よりも多人数に増え、世話人・職員体制が手薄になり、ヘルパーも利用できなくなります。


 (8)谷間の障害の方にもヘルパー派遣が出来るようにしてください。
 手帳を持たない難病、高次脳機能障害てんかん自閉症などの方への支援が必要です。


 (9)行動援護類型の基準と資格要件について見直しをしてください。
 一部差別的な内容をふくみ、かつ従事できる事業者・ヘルパーの要件が厳しいなど、現在の形では問題点が多くあります。