第Ⅱ期学習会 ③「重症心身障害者」

川崎市の障害者福祉をグランドデザインする会(GDP)
第Ⅱ期学習会 ③「重症心身障害者」
2005年6月29日(19〜21時)多摩市民館
参加者19名


講師 上本紀孝さん(重症心身障害児施設ソレイユ川崎・事務次長)
   小泉和子さん(川崎市重症心身障害児・者を守る会・会長)


 ↓以下、会場で話し合われた内容。


○今年の4月、川崎市に初の重心施設「ソレイユ川崎」が出来た。法人は広島の三篠会(みささかい・社会福祉法人)。川崎市で一番大きな入所施設。120床(措置入所100、ショート20)。現在は入所者33名。デイサービスも今後始める。くわしくはパンフレットを。


川崎市にはこれまで重心施設がなかった。親は自分の子どもを、別の市町村の施設に入れざるをえなかった。なぜ川崎市に重心施設がないのか。障害福祉課と長く折衝して来た。長年の悲願。「川崎に重心施設を!」という活動の中で、他の人々とのつながりも出来てきた。一人ではないとわかった。予想よりも早くソレイユが出来、うれしい。


○6月19日、「全国重心を守る会」の場で、厚生労働省から説明が。これまでグランドデザイン・自立支援法では、重心の人への対応が見えにくかったが、固まってきた印象。


○今後は、本人が施設に入所すると、親とは世帯分離し、住民票を移すことになる(児童は除く)。これには本人の施設利用料の負担軽減の効果がある。「世帯同一」だと負担が高くなる。ソレイユだけでなく、他の入所施設も同じだろう。ただ、世帯分離を行政側が積極的に進めるのであれば、不思議だ。


○施設入所者が支払うお金は、月額で、「医療費」(4万5千円)、「食費・水光熱費」(2万3千円)、「福祉サービス費」(2万3千円)の三つが主。入所者は全員、このラインになる。食費なども支払いも必要になることに。合計すると、月額で9万1千円。この額だと、障害者年金1級(約8万3千円)でも支払えない。そこは行政が調整するようだが。手元に2万8千円程度残るようになる、とされる。生活保護の人を除いて、みなこのラインになる。行政としては、生活保護の人はなるべく出さない方針。医療費免除などがあるから。しかし、この「2万8千円」程度という額はどうなのか。


○入所者も、今後は、「外部診療」「歯科診療」については、基本的に3割負担になる。


○「福祉サービス費」という言い方は、誤解をまねくのでは。特別な「サービス」を受けるわけではなく、生存の部分で必要なのだから。応益負担という考え方を同じ。


○ただ、児童福祉法の改正が今後3〜5年で言われている。ここがポイントになるかも。重心の人が、「児童」の枠と「成人(身体障害者福祉法)」の枠、どちらにより強く位置付けられるか。いずれにせよ、様々な問題が生じる。まだ見えない部分。例えば従来の「措置」の部分がどうなるか。現在、児童のショート利用・入所などは児童相談所が行なっている。これが今後は契約での利用になると、迅速な対応ができない。それから、一律に「医療費」「食費」などと言われるが、重心の人には機能にすごく幅がある。呼吸器、経管栄養、その他。食事の仕方もぜんぜん違う。そこを勘案しての話なのか、不安を覚える。


○重心施設は、医療の面と福祉施設の面、両方を持つ。そこがわかりにくいかもしれない。これが5年後、各施設は、「医療型」と「福祉型」の選択性になるかも知れない。そこは分かれ目になるかも。基本的には、障害の「軽い」人は入所対象から外れる。例えば新しい区分認定などで、「あなたは障害が軽いから入所の対象にならない」等という話になりかねない。グループホームも同じかもしれないが。でもこれは現実的には考えにくい。どうなるのか。


○施設の規制緩和・民営化が進む。児童福祉施設なども、従来よりは簡単に作れるようになるようだ。いい面もあるが、劣悪な施設環境になる危うさもある。


○生まれながらの障害者のことは、小児科医でないとわからない部分が多い。重心が児童福祉法から身体障害者福祉法に移ると、そういう問題も生じるのでは。


○老人と障害者の違い。老人には子供がいる。障害者の介護は親がみる。親が先に死ぬ。そこの違いが一番大きい。だから入所施設が必要になる。どの親もそのことを考える。そこがどうなっていくのか。


○障害者にとって「児」の時期はとても大切。ライフステージごとに必要な支援が全然違う。いっしょくたにできない。でも一連の改革では、そこが見えにくい部分。置いてかれている。療育のことをきちんと考えないといけない。