財源がない?――議論の前提の議論

 議論の前提として「財源がない」「社会保障制度の長期持続を目指すため、お互いに負担をわかちあう他にない(だから障害者も自己負担してくれ)」、これは「仕方ないこと」とされる。


 しかし、この議論の前提自体に議論の余地があることは、推進派に都合のいいデータの改竄(http://d.hatena.ne.jp/sugitasyunsuke/20050709)、あるいは朝日新聞2005年6月28日の記事「審議進む「自立支援法」 障害者施策伴わぬ実態」に掲載された次のデータからも、その一端がわかる。


 ●日本の01年の国内総生産(GDP)に占める障害関連分野の割合は0.66%。これはアメリカの半分、ドイツの5分の1、スウェーデンの9分の1。
 ●そもそも、日本の法律には知的障害者の定義がない。人数も、政府は46万人(人口の0・36%)とするが、これは療育手帳を持つ人を中心にした数にとどまる。先進国では、知的障害者の人口は2%前後とされる。
また国内の身体・知的・精神を合わせた障害者の総数は656万人。人口の5%。しかし、主な先進国では人口の10〜20%とされる。
 なぜ日本では「障害者の数が少ない」ことになっているのか。日本では、医学的な面から障害判定するのが中心だが、国際的にはICF国際生活機能分類)に基づき、生活面の困難や環境要因に注目し、広い概念で捉える。結果的に、日本では難病・慢性疾患・発達障害などが「谷間の障害」となり、支援の対象とならない。
 ●政府は新障害者基本計画(平成14年)で障害者の「所得保障に取り組む」としたが、一向に進まない。障害者の多くは月額6万6200円の2級年金が主な収入。生活保護よりはるかに低い額だ。


 さらにid:jasmine156さんのコメントによると、
 例えば「平成14年度の国民医療費の推計は、31兆1、240億円」であり、「医療費全体の中で精神・行動障害の医療費は第4位で1兆7,667億円」だが、そのうち、入院医療費が1兆3,358億円を占める、つまり「精神・行動障害の医療費のうち、75.6%は、入院医療に使われている」という。(http://d.hatena.ne.jp/jasmine156/20050712/p3

公費負担制度が撤廃されることで、経済的理由によって通院を選択しなかったり・中断したりして、それによって病状が悪化、病気が再発し、入院・再入院というケースが増えてしまったら、余計医療費がかさむことにもなりかねない。

 そして「社会保障改革の本丸は来年の医療保険制度の見直し、今年の介護保険改正と自立支援法はその地ならし」」という話を大学の先生から聞いたそうだ。