最近の仕事(ジェノサイド論)



 ◆「ジェノサイドについてのノート――リティ・パニュ、ジョシュア・オッペンハイマー伊藤計劃」(62枚、「新潮」2015年3月号)


 上記の批評が掲載されます。消費と倫理、娯楽と暴力、無関心と罪悪感の間を縫うような批評の可能性を考えてみたいと思いました。その意味では「新潮」掲載の「東浩紀論」→「アイヌのこと、少しずつ」→本稿は連続的な試論になっています。さらに今後はこれらの先で「虚構と戦争」について、時代の空気を吸いながら、試行と錯誤、暗中と模索を続けていくつもりですが、何が書けるのか、書くに値するのか、今はよくわかりません。思えば、在日コリアン・韓国人・中国人に対するヘイトスピーチの暴力が色濃い空気の中で書きはじめ、最後のゲラ作業は「イスラム国」(略字にはしません)による後藤さん・湯川さんの人質・殺害事件が進行中という切迫の中で行われました。否応なく本稿も時代の空気を吸い込んでいるとは思います。緩慢に続くこの国の「戦後」以降の、戦争と虚構をめぐる時代の分岐点に立って、書くことの無力と力の意味を問われている、ためされている、とも感じます。




新潮 2015年 03 月号 [雑誌]

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