最近の仕事(上田岳弘と羽田圭介)



 8月発売号(9月号)の文芸誌に、第28回三島由紀夫賞を受賞した上田岳弘氏の『私の恋人』の書評と、『スクラップ・アンド・ビルド』で第153回芥川龍之介賞を受賞した羽田圭介氏についての短い作家論を書きました。
 名高い文学賞を受賞し、これからさらに飛躍せんとする若い小説家の仕事に向き合うことには、やはり、独特の緊張感があると感じました。いつも以上に、批評する側が批評されることになり、自分の言葉の強度を根底から試されるので。上田さんも羽田さんも、素晴らしい作家だと思いました。


 ◆「惑星と小石――上田岳弘『私の恋人』書評」(「新潮」2015年9月号)
 ◆「羽田圭介論――ミート・ザ・ルーチンワーク」(19枚、「文學界」2015年9月号)


 羽田氏と同時に芥川賞を受賞した又吉直樹氏の『火花』をやっと読んだけど、これも素晴らしかった。芥川賞とか、芸人とか、そういう文脈を無視して読むことは難しいのかもしれないけど、無視して読むことを自然に促してくれる小説だと思った。つまり純粋にいい小説だと思った。


 近況少し。拙著『宮崎駿論』、半年ほど前に中国語(簡体字版)への翻訳の契約を交わしたのだけれど、先ほど繁体字版(台湾、香港、マカオシンガポール)の翻訳オファーを頂きました。宮崎駿のアジア圏での、そしてグローバルな人気のためだとは思うけど、素直にありがたい話です。(ちなみに上記の『私の恋人』書評に関連して、僕にとっての「人間を超える」と「卑小な小石に躓く」とはどういうことか、『宮崎駿論』の中である程度書いていると思います。)


 2月頃からかなり苦しい鬱屈の時期が続いているのですが、当面の仕事として、「ジョジョ」論と長渕剛論の単行本を完成させるための作業をしています。そのうちご報告できるといいなと思います。


新潮 2015年 09 月号 [雑誌]

新潮 2015年 09 月号 [雑誌]

文學界 2015年 09 月号 [雑誌]

文學界 2015年 09 月号 [雑誌]