障害者自立支援法案、衆議院の厚生労働委員会で可決
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050713-00000111-yom-pol
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/20050714ddm003010026000c.html
与党は、(1)医療費の自己負担を引き上げる時期を、国民への周知徹底のため今年10月から来年1月に延期する、(2)障害者の所得拡充策と、法律の対象を発達障害者などへ拡大することを検討する規定を付則に設ける――などの修正を行っている。
また、厚生労働委員会では、障害者の所得拡充をめぐって、「社会保障の一体見直しと併せて、3年以内に結論を得る」という付帯決議も行った。云々。
政府は今国会での成立を目指し、早ければ明日15日の衆議院本会議で可決され、参議院に送られる(これがギリギリのスケジュールらしい)。
成立すれば、あとは政省令(8月〜9月中?)に委ねられるが*1、そうなれば、あとは厚生労働省がかなり独裁的に中身を決定できる、という運びになるようだ。
どこがどう転べば、どうなるんだろう。
わからないが、では「わからない」とだけ述べて燻ぶれば、あとで後悔しないですむか。というか、この場合、真の「後悔」とは何か。
*1:そもそも自立支援法は、負担額以外のポイントは中身がスカスカでわからないままにされ、あとからかなり何でも盛り込める空虚なウツワみたいなもの。
財源がない?――議論の前提の議論
議論の前提として「財源がない」「社会保障制度の長期持続を目指すため、お互いに負担をわかちあう他にない(だから障害者も自己負担してくれ)」、これは「仕方ないこと」とされる。
しかし、この議論の前提自体に議論の余地があることは、推進派に都合のいいデータの改竄(http://d.hatena.ne.jp/sugitasyunsuke/20050709)、あるいは朝日新聞2005年6月28日の記事「審議進む「自立支援法」 障害者施策伴わぬ実態」に掲載された次のデータからも、その一端がわかる。
●日本の01年の国内総生産(GDP)に占める障害関連分野の割合は0.66%。これはアメリカの半分、ドイツの5分の1、スウェーデンの9分の1。
●そもそも、日本の法律には知的障害者の定義がない。人数も、政府は46万人(人口の0・36%)とするが、これは療育手帳を持つ人を中心にした数にとどまる。先進国では、知的障害者の人口は2%前後とされる。
また国内の身体・知的・精神を合わせた障害者の総数は656万人。人口の5%。しかし、主な先進国では人口の10〜20%とされる。
なぜ日本では「障害者の数が少ない」ことになっているのか。日本では、医学的な面から障害判定するのが中心だが、国際的にはICF(国際生活機能分類)に基づき、生活面の困難や環境要因に注目し、広い概念で捉える。結果的に、日本では難病・慢性疾患・発達障害などが「谷間の障害」となり、支援の対象とならない。
●政府は新障害者基本計画(平成14年)で障害者の「所得保障に取り組む」としたが、一向に進まない。障害者の多くは月額6万6200円の2級年金が主な収入。生活保護よりはるかに低い額だ。
さらにid:jasmine156さんのコメントによると、
例えば「平成14年度の国民医療費の推計は、31兆1、240億円」であり、「医療費全体の中で精神・行動障害の医療費は第4位で1兆7,667億円」だが、そのうち、入院医療費が1兆3,358億円を占める、つまり「精神・行動障害の医療費のうち、75.6%は、入院医療に使われている」という。(http://d.hatena.ne.jp/jasmine156/20050712/p3)
公費負担制度が撤廃されることで、経済的理由によって通院を選択しなかったり・中断したりして、それによって病状が悪化、病気が再発し、入院・再入院というケースが増えてしまったら、余計医療費がかさむことにもなりかねない。
そして「社会保障改革の本丸は来年の医療保険制度の見直し、今年の介護保険改正と自立支援法はその地ならし」」という話を大学の先生から聞いたそうだ。