ひきこもりのことと自立生活運動のこと

 上山和樹さんid:ueyamakzkその他の議論にあるけれど、ひきこもりの問題が徐々に「心理」の問題から「経済生活」の問題にシフトして捉えられるようになった。
 ひきこもり当事者の高齢化もあるし、ニートなど経済に特化した言葉の登場などもある。ぼくはさらに、ひきこもり者にとっての「住宅」の問題もすごく大事だと考える。

 それから、ひきこもりは経済生活の問題だという主張は、「働かざるもの食うべからず」という議論とは違う。「働かざるもの食うべからず」的な観点を批判しこれに抗するため、いったんは個々人の心理や欲望の問題がポジティヴに語られた。でもその先で、やはり経済生活や就労の問題はとても大事なものだ、という観点がもう一度出てきた。
 同じ経済生活の問題を語るにしても、「働かざるもの食うべからず」の水準と「やはり経済生活は大事だ(少なくとも、大事だと感じる人はけっこういる)」という水準は、ビミョウに違う。そのビミョウな違いがすごく大事なんじゃないかなあ。

 この認識は、そして、一九七〇年代以降の障害者の自立生活運動などでかちとられてきたものとパラレルだと思う(『当事者主権』ISBN:4004308607『自立生活運動と障害文化』ISBN:4768434266)。でもその歴史的な積み重ねが、障害者のグランドデザイン案などを見るとなかったことにされ(これもバックラッシュとか呼ぶの?)、旧来の「働かざるもの食うべからず」的自立観へ逆行している。経済的自立/身体的自立/介護付自立、などの自立観のグラデーションも、とても繊細で大事なものなのに、乱雑に消し去られていく。

 ひきこもり者が身体障害者の人々が積み重ねてきた自立生活運動から学べるロジックやノウハウはたくさんあると思う。ぼくもそれらからたくさん学びたい。