三つの切断線――平成17年4月/平成17年10月/平成18年1月

 4月のヘルパー単価の大幅切り下げで、支援費(身体・知的障害関係)中心の事業所はどこもたいへんだ。収入が30〜40%は落ちる。

 これだけは言っておきたい。「この制度では、今後、障害者の地域生活支援を新しくゼロからはじめようとする事業者は出てこない。」(http://d.hatena.ne.jp/lessor/20050403/p2



 うん、本当にそうだろうな。
 しかしぼくは、平成18年度1月の制度移行、つまり1割負担の導入や認定審査会などのスタート(おおざっぱにいえば、実質的には支援費制度の介護保険への吸収)に連れて、この業界にはもっと激しい変化が生じる、と予想する*1
 こう思う。
 げんざい介護保険を中心に運営している事業所が、今後は障害者にも対応するようになっていく形は、けっこううまくいくだろう。むしろ新しい+α的な市場の開拓とさえいえるかもしれない*2――介護給付から外れ、自治体の独立予算になる移動介護系は(報酬が、引き下げられたとはいえ今はまだ支援費対象に入っている現在よりも、さらに極端に低くなる上に)怪我や行方不明などの危険が多いので、いやがるだろうけど*3。というか、1時間30分を超えた後の時間の単価は殆ど収益にならないので、長時間の外出サポートは嫌われるだろう。


 でも、逆はどうかな?
 これまで支援費を中心にやって来た事業所(支援費と共にたくさん出来たNPO法人)が、今後の変化(介護保険への吸収)に対応できるか。
 前者にくらべて、かなり、そうとう、難しいだろうな、と率直に思った。
 多くの事業所は、経営破綻するか、ボランティア団体に変質せざるを得ないだろう。


 平成18年1月以降、小さいけどものすごく理念+経営的にきちんとした事業所をつくるとして、そういう事業所がある程度はやっていけるだけの状況なのか?それも無理なのか?

*1:いや、これは言いすぎか。グランドデザインはまだまだ中身が決まっていない。市町村レベルでも分からない部分は多いようだ。だから「変化」は、やはり平成18年1月/4月/10月と段階的に生じるんだろう。【追記】→lessorさんの言葉、「たぶん最大の山場は平成18年10月の「移動支援事業」開始だろうと思う。」なるほど。それから、この分野ではしばしば「地域格差」が言われるが、自分なんかはまだまだ認識が甘っちょろいんだ、と痛感する。いずれにせよ、現状の動向を見る限り、川崎市でも「移動支援事業」は殆どボランティア的な価格になることだけは動きそうにない。この点に何かを期待すべきじゃない。

*2:ぼくのイメージでは、老人/三障害/保育、などに対応できるマルチヘルパー事業所的なものが、辛うじて生き残っていく気がする。それにはよい面と悪い面がある。たとえば精神障害のヘルパーは、内容の面では、老人ヘルパーに似ているので、老人ヘルパーの派遣もやっている事業所は、精神ヘルパーの派遣にも対応できやすい、と言われる。もちろんそれぞれの専門性があるが。障害者福祉に携わる人は、よく「老人はマニュアル的対応で可能で、障害者は個々人の特性があるから専門性がいる」と安易に口にするけど、そんなわけがない。粗忽なヘルパーさんが、介護保険事業所の人の前で、堂々と「わたし老人の介助はやりたくないんですよー」と笑っていた。そういう感覚を持つのは自由だけど、それをその場で口にするのは人としてどうよ?

*3:それにしても、4月から既に新設されているはずの「行動援護」は、どうなっちゃったのかな。名目ばかりのもの?少なくとも川崎市では、全くうわさすら聞かない。精神障害の人々のヘルパー事業(支援費の予算に組み込まれたもの)についても、うわさすら聞こえてこないけど。