クリント・イーストウッド『ミリオンダラー・ベイビー』

ミリオンダラー・ベイビー [DVD]

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 絶句。後半、一挙に安楽死尊厳死映画へと転調する。凡百の「障害者もの」よりはるかにすごい。イーストウッドの世界観の、この重苦しさはなんだ。人生や「運命」(やはりこう呼ぼう)とぎりぎりまで戦いつくし、でも敗北をくりかえし、その先に初めてたどり着いたような、この息苦しさと硬質さはなんだ。『ミリオンダラー・ベイビー』は、『ミスティックリバー』の重苦しさをさらにシンプルに煮詰めて純化したようなストーリーで、本当に絶句する。だがその先で、ぼくは、やはり、イーストウッドの感覚は致命的なところでまちがっている、と思う(この映画が選ぶ安楽死の肯定否定それ自体をいうのではない)。「ちがう!」と叫びたい。