『嫌われ松子の一生』

 『嫌われ松子の一生』をDVDで。

嫌われ松子の一生 通常版 [DVD]

嫌われ松子の一生 通常版 [DVD]

 「女であること」を直情的に生き切ろうとし、繰り返し敗北と挫折を繰り返していくヒロインの姿勢から、どうしても有島武郎或る女』を思い浮かべてしまう。
 しかし、『或る女』の葉子には、「男である読者」が感情移入して読むことを絶対に許さない過酷さがある。死にたくても死ねない葉子の「痛い、痛い」という最後の呻き声は、自殺(による人生の美的完結)への抵抗であると同時に、「男」が無限に葉子の身体=子宮を痛めつけ続けることが終わらないこと、を告げるものでもある。これに対し嫌われ松子の一生は、(甥の青年の視線を通して)簡単に感傷の中に収まってしまう。ぶくぶく太ってごみ屋敷に暮らす晩年の松子も、もうちょっと醜く描けなかったかな(光ゲンジに膨大な厚さのファンレターを郵送し、返事を数年間待ち続けるシーンは、ありがちといえばありがちだけど、狂気の片鱗を感じさせてちょっとよかった)。
 過去と現在を行き交う時間のカット&ミックスの仕方があまりうまくない。乱雑な感じ。