山城むつみ『ドストエフスキー』

 山城むつみドストエフスキー』の連載第3回がついに『文学界』に掲載。毎回のことだけど、読むと自分の書き直し中の数点の批評(村上春樹論も小林秀雄論も『EUREKA』論も)を全て破棄し虚無に帰したい感覚に見舞われる。いったい自分は何をやっているのか。この圧倒的敗北感の先に、なお書くべき事柄が自分の魂の内に残っているか。これだけの文章が現在進行形で今の日本に「ある」事実にぼくは感謝すべきだろう。
 この『ドストエフスキー』という投げ出されたようなタイトルはぶっきらぼうだけど、確かにこれはもはやドストエフスキーに関する「ノート」でも「批評」でも「注釈」でも「手紙」でもない。