批評系

『1995年――未了の問題圏』

『1995年――未了の問題圏』(大月書店)という本に参加しています。まもなく刊行の予定です。 http://www.otsukishoten.co.jp/cgi-bin/otsukishotenhon/siteup.cgi?&category=1&page=1&view=&detail=on&no=226 戦後史の結節点としての〈1995年〉から照射…

「秋葉原事件の「男性性」」

ほとんど何も出来ていませんが、『クイック・ジャパン』79号に、「秋葉原事件の「男性性」」という覚書的な文章を寄稿しました。僕は「男性性と性暴力」という実感からしか、この事件に向き合えないようでした。クイック・ジャパン79 (Vol.79)作者: アメトー…

『ロスジェネ芸術論』(1)

文芸誌『すばる』(2008年8月号)に、「『ロスジェネ芸術論』(1)――生まれてこなかったことを夢見る」という文章が掲載されます。不定期掲載の予定です。 希望がないばかりか絶望すらできない、むしろ希望を差し出す他人の手を――そして何かに期待しては失…

「死刑存置論者よ、殺すというなら自分の手で殺せ」と「死刑廃止論者よ、出獄してきた凶悪殺人犯の隣に住んでみよ」

mojimojiさんの以下の問いかけは、一見極端に見えるけれども、とても重要に思われた。 《【1】僕は、死刑に賛成する人には、その人自身が執行人になるということまで含めて賛成してもらいたいと思うと同時に、【2】死刑のみならず終身刑をはじめとして死刑以…

最近の書き物

『ユリイカ』2008年6月号(http://www.seidosha.co.jp/index.php?published)に「福満しげゆき、あるいは「僕」と「美少女」の小規模なセカイ――マンガは複眼で触り続ける」という文章を書きました。今後、表現論(形式)と批評(政治)をクロスさせた場所で…

近況

3月半ばからもろもろあり、しばらくウェブやメールなども殆どチェックしていませんでした。連絡不通などお詫びします。 相変わらず淡々と介護の仕事。この間、川崎市の障害児ハンドブックを作成する作業に関わり、行政・民間事業所・子育てサークルなど、あ…

ALS・自然死・家族介護

http://www.seidosha.co.jp/index.php?%B4%B5%BC%D4%B3%D8 『現代思想』2008年3月号(特集・患者学)に、「ALS・自然死・家族介護――いちヘルパーの小規模な日常から」という文章を書きました。地味で小粒でしかも未成熟ですが、自分的には割と大事な文章…

『大谷能生のフランス革命』

ついに刊行のようです。 杉田もどっかでしゃべってます。 菊地さんのアオリが…。大谷能生のフランス革命作者: 大谷能生,門松宏明出版社/メーカー: 以文社発売日: 2008/03/06メディア: 大型本購入: 2人 クリック: 323回この商品を含むブログ (78件) を見る 1…

『ユリイカ』に荒木飛呂彦先生についての原稿を

ご無沙汰しております。 『ユリイカ』の荒木飛呂彦先生の特集号(2007年11月臨時増刊号)に原稿を書かせて頂きました。 http://www.seidosha.co.jp/index.php?%B9%D3%CC%DA%C8%F4%CF%A4%C9%A7 感無量でございます。今までで一番書いていて楽しかった原…

市野川容孝「飢餓という殺害」

メモ。 市野川容孝がフーコーの「生権力」(生きさせるか、死の中に廃棄するという権力)を「餓死するにまかせる権力」として再解釈している(「生‐権力再論――飢餓という殺害」『現代思想』2007年9月号)。 市野川は、餓死というとき、食糧不足や栄養失調の…

安彦論、鼎談、他

『ユリイカ』2007年8月号に「生きのびることのオリジン――安彦良和小論」という原稿を書きました。前半は宇野常寛・東浩紀(的なもの)への批判、後半は安彦論です。よろしければ。(個人的にはイズミノウユキさんの視覚論が楽しみ。) http://www.seido…

『月刊オルタ』(2007年6月号)に「自己責任論・再考」を

『月刊オルタ』(2007年6月号)に「自己責任論・再考」という文章を書きました。短いですが、次に踏み出す一歩の予告になっていると思います。 http://www.parc-jp.org/main/a_alta/alter_text まだオルタのウェブには情報がアップされていませんが、販売さ…

世界は大いに盛り上げるもの、か?――武田敦・涼宮ハルヒ・石川啄木

少し前に『新現実』をぱらぱら読んでいたら、武田敦さんという人の「ゆめみるオタクの杞憂」という文章が、妙に気になった。新現実 v.4出版社/メーカー: 太田出版発売日: 2007/04メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 29回この商品を含むブログ (12件) を見…

リセット・リプレイ願望とルサンチマン

『PLANETS』Vol.3(http://www.geocities.jp/wakusei2nd/p3.html)に掲載されているという三ツ野陽介「 内輪のリアルを語る者は誰か? 東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生』を出発点に」を僕は読んでいない。しかしあるところで、その原型となる三ツ野氏の文…

東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生』のクリティカル・ポイント

『ゲーム的リアリズムの誕生』(二〇〇七年)の「付録B」の「萌えの手前、不能性に止まること――『AIR』について」に心を動かされた。もともと、共著『美少女ゲームの臨界点』(二〇〇四年)に収録されたものだという。そちらの論集は僕の手元にはない。…

ゲーム的メタリアルと労働のメタリアル

東浩紀は二〇〇七年に刊行された『ゲーム的リアリズムの誕生』において、『ALL YOU NEED IS KILL』『九十九十九』『ひぐらしのなく頃に』『時をかける少女』など、登場人物が人生のリセットとリプレイを繰り返すタイプの小説・アニメの形式に「ゲーム的リア…

あんぱんまんと分配的正義

あんぱんまんの絵本を幼い頃に読み、なにか不吉な凄みを感じたことのある人は多いんじゃないか。 アニメのアンパンマンの歌詞の「暗さ」も気になってた。 http://takoweb.com/~mebi/text/2006/anpan.php 歌い出しからして「なにが君のしあわせ/なにをしてよ…

優生学・家族負担・尊厳死

単なるメモです。 以下を読んだ。 ◆堀田義太郎[2004]「障害の政治経済学が提起する問題」、『医学哲学・医学倫理』、第22号、pp. 37−46 ◆堀田義太郎[200508]「遺伝子介入とインクルージョンの問い」、『障害学研究』第一号、2005年8月、障害学会 ◆堀田義太郎…

続き、少し。

――問題は「戦争を希望する」云々の箇所にはない。必要なのは経済格差の是正なのだ。そこを見落としたまま赤木氏を批判することは無意味であるばかりか、断絶をさらに悪化させ、固定してしまう。 たぶんこれは正しい。哀しいほどに。 「赤木氏を強いる気分の…

東浩紀+北田暁大『東京から考える』

東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)作者:浩紀, 東,暁大, 北田NHK出版Amazon ここまではその光景について「ジャスコ的」という固有名が出され、どことなく否定的な印象が付されていたけれども――そしてまた実際にそれを否定する議論も多…

五反田団『いやむしろわすれて草』

五反田団の『いやむしろわすれて草』を見た。東大駒場前のアゴラ劇場。2004年10月初演の再演。 『家が遠い』『おやすまなさい』とかの「いかにも五反田団っぽい」(?)作品ではなく、きちんとした物語の骨格がある。『おやすまなさい』の後だったので、意図…

切りきざまれる胎児を凝視する中で

1970年代前半の青い芝の会やウーマンリブのことをちょこっと調べていて、田中美津が繰り返し口にする「子殺し」のことがずっとひっかかっていた。当時の優性保護法改悪への対抗運動の文脈でも、田中の「子殺し」への独特の拘泥は、賛否両論を招いたらしい。…

チェルフィッチュ『エンジョイ』に寄せて

チェルフィッチュの新作『エンジョイ』の公演が迫っている(2006年12月7日〜23日、http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/10000119.html)。 そのパンフレットに「労働のふるさと――『エンジョイ』に寄せて」という短い文章を書かせて頂いた。岡田利規さん…

「左」の凄みについて――小林よしのりと大塚英志

【一部、言葉を追加しました。15日。】 男性弱者?系のエントリーについて、大体書き終えたのだけど、ブログへのアップに躊躇している。ほかの人なら2行で書けるのを、すごく長くうねうねと書いただけのものなんだけど。しばらく寝かせましょう。私は今ま…

小林よしのり『脱正義論』『戦争論』

小林よしのりのマンガを初めて読んだ(正確に言うと、10年位前にごく初期の『ゴーマニズム宣言』は少しだけ読んでいた)。 ◇『脱正義論』(一九九六年六月) ◇『戦争論1』(一九九八年七月) 薬害エイズ運動の経験をマンガ化した『脱正義論』には、率直に…

カフカ

…《まさにこの病的な無力の状態の原因をなんとか解明するために彼は『日記』を開始するのであって、ここで彼は「ちょうど今日、望遠鏡が彗星に向けられているように、毎日せめて一行だけでも自分に向けること」を望み》…(『カフカのように孤独に』邦訳257頁…

『現代思想』に「無能ノート」を

『現代思想』(http://www.seidosha.co.jp/index.php?%A5%A2%A5%AC%A5%F3%A5%D9%A5%F3)に「無能ノート――アガンベン、荒木飛呂彦、セン」という文章を書きました。 よろしければ。

中村光夫『風俗小説論』メモ

少し前、中村光夫『風俗小説論』(1950年)を読み返し、愕然とした。私小説・風俗小説(批判)の問題は少しも古びていない、と、他人事でなく思い知った。というのは、自分が最近書いてきた批評文の傾向に対する完膚なき批判を、既に含んでいるから。 中…

小泉義之『病いの哲学』の、とくにとりとめもない、感想

病いの哲学 (ちくま新書)作者: 小泉義之出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/04メディア: 新書購入: 5人 クリック: 43回この商品を含むブログ (51件) を見る 3章(レヴィナスと臓器移植論、臓器・肉体の分配のラディカリズム、「生き延びる籤」)の議論…

宇多田ヒカルのパッション(2)

Be My Lastアーティスト: 宇多田ヒカル出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン発売日: 2005/09/28メディア: CD クリック: 20回この商品を含むブログ (75件) を見る ぞっとした。 この曲の《本体》は「あああああ」の部分にあるのだろう。歌詞はぎりぎり…