批評系

『ユリイカ』に「ニート/バートルビー――生まれてこなかったことを夢見るイエス」を

雑誌『ユリイカ』の2006年2月号(特集・ニートと文学)に、「ニート/バートルビー――生まれてこなかったことを夢見るイエス」という原稿を書きました。前半はニートの「働けなさ」について、後半はメルヴィルの『バートルビー』について書きました。 ht…

小林秀雄『感想』の感想

小林秀雄のベルグソン論『感想』を通読した(新潮社版『全作品』別巻1・2)。 『感想』は「新潮」1958年5月号から連載が始まり、63年6月号で未完のまま連載を中断、後年小林自身が、家族と新潮社にその刊行を「禁止」している。小林は岡潔との対話…

山城むつみ『ドストエフスキー』

山城むつみ『ドストエフスキー』の連載第3回がついに『文学界』に掲載。毎回のことだけど、読むと自分の書き直し中の数点の批評(村上春樹論も小林秀雄論も『EUREKA』論も)を全て破棄し虚無に帰したい感覚に見舞われる。いったい自分は何をやってい…

仲俣暁生さんのエントリー

「人的資本」という概念で、福祉国家の解体後における新しいセイフティネットを構想する稲葉振一郎の『「資本」論』に対して、以前『エフェメーレ』という同人誌で私にインタビューをしてくれたことのある杉田俊介くんが憶えたという「怒り」の意味をずっと…

暗い時代のヒトビト

アレントの『暗い時代の人々』を読み始めたが、面白いです。暗い時代の人々 (ちくま学芸文庫)作者: ハンナ・アレント,阿部斉出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2005/09/07メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 12回この商品を含むブログ (31件) を見る なるほ…

小林秀雄「様々なる意匠」(昭和4年4月『改造』)

小林秀雄の文章は、主に学生時代、人並みに読んできたが、小林の批評について何かを書こうという欲求は湧かなかった。 久々に読んでみた。 全体を通して、極度に凝縮されたこの批評文の、一種なげやりな感じに驚いた。逆説やイロニー、「搦手から」の軍略は…

http://d.hatena.ne.jp/erohen/20050130 半年も前に、『エフェメーレ』2号の丁寧な感想を書いてくれている方がいたと、今日気付いた。長いこと気付かず、申し訳ありません。そしてありがとうございます。

小泉義之「無力な者に(代わって)訴える」(『別冊情況』2005年9月「レーニン〈再見〉」)

すごい。哲学はこうでなくちゃ。読んでみて下さい。 天皇主権も国民主権も根は同じであり、「憲法」の存在自体に無能力(disability)への排除がある、と明晰に書く。13条(幸福追求権)や25条(生存権)だろうと同じであり、それは無能力者を排除し、「…

http://www.hajou.org/hajou/cm68/cm68paper.pdf(2004年で祭りは終った) http://www.hirokiazuma.com/blog/(情報自由論出版中止について) 知的教養の違いは全く度外視すれば、くだらないお祭り騒ぎとその後の弛緩・迷走・停滞、は全然他人事ではなく…

メモ(消費者主権とノンポリ性)

フィルタリングやカスタマイズが、いわばメディア空間を、発信者の論理ではなく、受け手の、すなわちメディアの「消費者主権」を強化することは明らかである。昨今では私たちは、情報の内容のみならず、それをいつ、どのような場所で視聴するかという点につ…

阿部和重「鏖」

思うところがあり、書きためた(乏しい)批評ノートのまとめを、もうしばらく続ける。 「鏖(みなごろし)」(一九九八年一二月)。阿部の中でも少し気になる作品。 ↓『無情の世界』所収。 無情の世界 (新潮文庫)作者: 阿部和重出版社/メーカー: 新潮社発売日:…

佐藤友哉『フリッカー式』

フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人 (講談社ノベルス)作者: 佐藤友哉出版社/メーカー: 講談社発売日: 2001/07/06メディア: 新書購入: 1人 クリック: 93回この商品を含むブログ (175件) を見る 佐藤の第一作。 まず文体の問題。その稚拙さ・クズさ・饒舌…

保坂和志『プレーンソング』

プレーンソング (中公文庫)作者: 保坂和志出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2000/05/01メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 79回この商品を含むブログ (182件) を見る 保坂さんはよく村上春樹と比較されるが事実(顔だけじゃなく)作品の構造=骨格は似…

滝本竜彦『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (角川文庫)作者: 滝本竜彦,安部吉俊出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2004/06/24メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 119回この商品を含むブログ (309件) を見る アニメチックなセーラー服の戦闘美少女・雪崎絵理は…

佐藤友哉『鏡姉妹の飛ぶ教室』

鏡姉妹の飛ぶ教室 (講談社ノベルス)作者: 佐藤友哉出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/02/08メディア: 新書購入: 3人 クリック: 24回この商品を含むブログ (132件) を見る 久々に小説を*1。佐藤友哉『鏡姉妹の飛ぶ教室』。彼の小説は基本的に講談社ノベル…

『カーニヴァル化する社会』

少し前に『カーニヴァル化する社会』を読んだ。 カーニヴァル化する社会 (講談社現代新書)作者: 鈴木謙介出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/05/19メディア: 新書購入: 14人 クリック: 316回この商品を含むブログ (323件) を見る 「非正規な不安定労働者」…

さまざまな眼143 古谷利裕・展

地元で古谷さんの展覧会が。久々に絵を見に行こうかな。http://homepage2.nifty.com/k-bunkazaidan/samazamaname.htm 4月21日(木)〜5月17(火) かわさきIBM市民文化ギャラリー(川崎市川崎区日進町1-14)TEL044-233-3400 午前11時〜午後7時(会期中無休) ↓以前(…

日本国憲法についてのメモ・・

『広告批評』の特集「日本国憲法第9条」を読んだ。68人のアンケートと、池澤夏樹・大塚英志・高橋源一郎の鼎談。 日本国憲法に関してはぼくは全然勉強もしてない。でもきちんと考えたい、とは感じていた。今のところ考えていることを、少しメモ。 「君は…