児童虐待対策の民営化?



 2008年4月から始まる市の単独事業で、基本的には一障害者ヘルパー事業所である自分たちの事業所にまで、児童相談所から、児童虐待対策の機能が降ろされて来ようとしている。ほんのわずかなものではあるし、はっきりとそう謳われているわけではないのだけれども(言葉足らずの部分を後記。基本的には、療育センターがパンク状態なので、その相談機能の部分を非営利の民間事業所におろす、という話なのだけれども、ただ、その中に、微妙に児相の機能もふくまれているようにみえる、ということです。*1
 何年か前から「児相と保健機関の連携」みたいなことが言われ、川崎市でも、児相の機能は、すでに各区の保健分野=福祉事務所(保健福祉センター)にも部分的に下ろされていたけれども、ついに、いちNPO法人=民間事業所にまで、その役割が期待されているのだなあ、と実感。もちろん機能を「降ろす」なんて言わず、「連携」と言うわけだが…。
 市の事業案を見ると、「家族の養育能力を高める」とか「早期介入」とか「虐待対策」とか、こちらの分野では、今まであまり見覚えのなかった言葉が並んでいる。
 一応、公的機関である地域療育センター(市内現在3ヶ所)が、委託事業所を束ねるセンター的役割を担うことになっているけれども、川崎市では、同時に、療育センターの民営化も着実に進められつつある(平成22年に新しく開設される西部地域療育センターは、財団法人神奈川県児童医療福祉財団が運営することが決まっている)。
 学童保育所(国の放課後健全育成事業による)を全国に先駆けて早々に全廃し、「わくわくプラザ」を全市的に展開したこと(現状では学童を全廃したのは川崎市と東京都品川区のみ)をふくめ、川崎市は、どうもこの辺、妙にフロンティア(?!)を目指したがるところもあるみたい。*2


 いわゆる里親制度も、2002年4月に大幅な変更があり、その中に「専門里親」が新設されたけれども、これは虐待を受けた子どもの受け入れ先としての里親の意味があった。というか、虐待問題の解消のためという後押しがあり、里親制度の内容が変更されたらしい。(障害児を専門的に受け入れるための里親は、特に設けられていない。実際は障害児の里親もいるんだけど。)


 ちなみに、川崎市はよく、里親制度が発達されていると言われるんだけど、これは、養護施設や乳児院、一時保護所などが圧倒的に少ないことの裏返しでもある。「里親制度が発達していたから、施設が少なくて済んだ」というわけでもないらしい。この辺の因果関係と地域特性は、関係者に聞いてもなかなかわかりにくいんだが…。


 ある自立生活センターの身体障害当事者が、「支援費制度の始まりのとき、措置から契約へ、という流れを止められなかったのは、失敗だった」と悔しそうに言っていた。「措置」の権限を外すということは、逆にいえば、公の責任を外すことになるわけだから。
 この流れが、今や、障害児(子ども)にすら向けられているのだな、と実感。
 子どもに対する国の福祉は、最後の防衛線という気もするのだけれども……。
 他方で、親や関係者からすれば、公的機関の既得権化も一方では打開しがたい事実としてあり、だから、それならばいっそ民間事業に運営を任せた方がマシ、という気持になってくるのは分かるし、確かにそういう部分は無いとはいえないのだけれども、子どもの生活の部分まで、公的責任(措置)を外してしまうのは、どうなんだろうか。5年10年単位で見たとき、現在の児童福祉・障害児福祉が、大きな雪崩現象のようにふりかえられるのかもしれない。(ちなみに、いわゆる日中一時支援(障害児一時預かり)も、4月から大幅な規制緩和が行われる。)



*1:虐待対策の全国的な状況はよくわからないので、よくご存知の方がいれば教えて下さい。

*2:ちなみに「放課後子どもプラン」は、平成18年5月に国が発表した放課後事業のこと。すべての子どもを対象にした「放課後子ども教室推進事業」(文部科学省)と、学童保育などの「放課後児童健全育成事業」(厚生労働省)の二つから成り立ち、両者を「一体的あるいは連携して実施する」とされる。親の就労保障の意味づけが二点三点していることもふくめ、この辺の関係は非常にややこしい。